浦永雑記

つれづれなるまま綴る雑記

はじめての “奉納“

——奉納。

「奉納(ほうのう)とは、
 神仏や精霊などに対して供物を捧げる宗教的な行為。」
Wikipediaより)


浦永は、以前から、人生1度くらい何かを寺社仏閣に奉納してみたいものだ、と思っていました。
石柱とか灯籠的なものを。


とはいえそれは、
石に刻まれたものって、たぶん数百年くらい残るし、自分の生きた痕跡をそのくらい残してみるというのもいいかもしれないな、というだけの理由によるものです。


ちなみに浦永は無宗教です。
特定の神様といったものは信仰しておりません。
ただ、基本的に、世の人々が脈々と信じている「存在」および土地ごとの伝統や文化、そして自分の中にある集合的記憶のようなものに対しては敬意を持って接する、という方針に則って暮らしております。


なので、寺社仏閣/教会/モスク/シナゴーグほか、人々の「祈りの場」を訪れる際は、どこであれ合掌し、祀られているものに挨拶することとしています。
(※新興宗教及び政治に介入する宗教は例外)


そんな私が、このたび、
石ではないもの(お酒)を奉納してきました。
なぜそんなことになったのか?
具体的にどんな感じだったのか?
今回はそんなお話について書きます。



遡ること、1年前。
浦永は友人たちと山陰地方へ縁結び旅行に出かけました。
Because we are 妙齢。
無宗教であっても何かに縋りたくもなるお年頃です。

そして、縁結びで有名だという神社3社を参詣しました。

するとどうでしょう、
参詣当日を境にネット上の人間関係が急速に発展、
それを機に想像もできないような濃密な1年を過ごすことができました。


あまりに急激な変化だったので、さすがに無宗教の私も思いました。

「これは来年お礼参りに行かなあかんやつや……」と。



にしても、お礼参り。


手ぶらでは何だか、この感謝の気持ちを伝えきれない気がする。

そう言えば、よく神前にお酒がお供えしてあるのを見る(一升瓶とか樽酒とか)。

そうだ、この際、生まれてはじめての『奉納』をしてみよう。



そう思った私は、仕事の繁忙期真っ只中の金曜日21時過ぎ、
みどりの窓口に駆け込んで翌日の列車の切符を確保し、その足で「酒屋 営業中」でGoogle mapを検索。
すると、帰りの路線を途中下車したところに遅くまでやっている酒屋があることが判明したので、そこに行ってみることにしたのでした。


駅から夜道をそこそこ歩いた住宅地の中にあるそこは、
個人経営の、なかなか…なかなかディープなお店でした。
恐る恐る入店すると、どうやらかなり年配のご夫婦が営まれているご様子。浦永は緊張しました。
「これ……私のして欲しいこと頼めるかしら……」と。


彼らにとっても、
夜も遅い閉店間際に、何の基準で品定めしているのかわからない
(冷蔵庫から小さなボトルを取り出しては首を捻り、戻してみたり、やっぱり手にとってみたり、を繰り返す)謎の女性客は、さぞかし奇異に映ったことでしょう。


そして浦永は店で2番目に小さな酒瓶を2本手に取り、
意を決して、ネットで得た知識を元に親父さんに声をかけました。


「……この2本を頂きたいのですが、
奉納用にして頂けますか』?」


というのも、どうもネットの情報では、どこの酒屋さんでも、『奉納用にして頂けますか?』と頼むと、うまいこと奉納用の外装に誂えてくれるらしい、と書いてあったからです。大切なことはすべてインターネットが教えてくれる時代。


親父さんはさぞ驚いたのではないかと思いますが、
顔色を一切変えず(もっと言うと、にこりともせず)低い声で言いました。
「2本まとめてかい?1本ずつ?」
浦永は心の中で「通じた!」とガッツポーズをキメました。



さて、2本まとめて、もしくは1本ずつ、というのがどういうことかというと。

よくあるお供え用のお酒というのは、こんなふうに2本を一つにしてまとめてあるらしいのです。


そしてネットの情報によると、2本お供えした時は1本をお下がりとしてもらって帰ることができる(そして神様の力の宿ったお下がり(お神酒)を飲むことができる)らしいとのこと。



しかし浦永としては、今回電車及びバスで遠方まで移動する計画であること、また、複数箇所を回る予定であることから、自分の手に持てて1箇所1本が限界である、と判断していましたので、「別々でお願いします」と答えました。


親父さん「で? ほうけん、とかでいいかい?」
浦永  「(…よくわからんけどその道のプロに任すか…)
     それでお願いします」
親父さん「……名前」
浦永  「へっ?」
親父さん「奉納する人の名前だよっ!」 


一瞬、SNSに掲載することを考えて「浦永」にしてもらうかどうか悩みましたが、それもどうかと思い、今回は本名を書いてもらうことにしました。


親父さんは、浦永さんね、と呟きつつカウンター下から
包装紙を取り出して、ボトルをくるくるくるっと手際よく巻き、
流れるようにシールで封をして、
小さなのし紙に手慣れた様子でさらさらと
「奉献 浦永(※実際には本名ですが仮名で浦永とします)」
としたためてくるりとテープで貼ったものを、ビニール袋に入れてくれました。


ちなみに、買ったお酒はこちらです。
www.born.co.jp


これが2本持って移動するにはギリギリのサイズだったので。
飲んだことないお酒でしたが、後から調べたら精米歩合の高いお酒らしくて清らかでお供えに良さそうな気がする(お酒のことも奉納のことも知らんけど。)



かくして、私は翌朝早く、酒瓶2本を手に山陰へと向かったのでした。


さて、今回のお礼参りでは3社を回りましたが、
そのうち1社は超ド大手(いわば壁サー)だったので、小さなお酒を奉納するのも気が引ける、と思い、そこではお賽銭を多めに投じることで替えることにしました。

なので、実際に奉納するのは2社です。
さて、実際の奉納とはどんな感じなのでしょう。


パターンA
「見たところ、神前に奉納されているものが一切なく、
 神主さんや巫女さんも常駐しておらず、物販の方だけしかいない神社」


浦永は親父さんに包んでもらったお酒をスッ…と取り出し、ネットに書いてあった通りに以下の文言を唱えました。
「すみません。去年、
ご利益を頂きましたので、こちらを奉納したいのですが』。」
どうも、奉納する際はこの言葉を唱えるとスムーズに受け取ってもらえるらしいのです。

実際のお酒がこちら

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(プライバシー保護のため画像改変及び包装紙に全力のレタッチを施してあります)

物販の方は明らかに
「えっ……どうしよ……逆に超迷惑なんですけど……」
という顔をしました。

そして、
「どうしよう……あの、これじゃどこの浦永さんかわからないから、とりあえず住所と下の名前も書いてください」
と筆ペンを貸してくれました。

浦永はその筆ペンで言われた通りに追記したものを物販の方に渡しました。

物販の方は、「それではお預かりしますので」とお酒をどこかにしまいました。





それだけ!?って?



そうです。




それだけです。



終〜了〜!




あっけないものです。

では次のパターンに移ります。


パターンB
「すでにそこそこ、お酒やお菓子など10数件のお供えが神前に確認でき、神主さんも巫女さんも常駐、かつシーズンの都合で祝詞上げっぱなしの神社」


こちらの神社はパターンAとは真逆、
ぱりっとした装束に身を包んだ職員さんが何人もいます。


そして折しも11月、七五三真っ只中。


小さな境内は子供とその両親、祖父母たちで埋めつくされ。
神主さんたちも途切れることなくENDLESS祈祷モード


浦永はお守りを売っている若い巫女さんに同じ台詞で切り出しました。

「すみません。去年、
『ご利益を頂きましたので、こちらを奉納したいのですが』。」


巫女さんは微笑むと、手慣れた様子で台帳を差し出して、
「ありがとうございます。それではこちらにご住所お名前とお願いごとがあれば書いてください」
と言いました。



…いいとか悪いとかないけど、パターンAと全然違うのである。


奉納したお酒と巫女さんのそで

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(やっぱりプライバシー保護のため画像改変及び包装紙に全力のレタッチを施してあります)

お願いごとは、他の人が四文字熟語で書いているのを参考に
「良縁祈願 諸芸上達」と書きました。
(諸芸〜は文章が上手くなりますようにの意をこめて)



私が書き終わると、巫女さんは
「それではこちらでお納めしておきますね!」
とお酒をどこかにしまいに行き、何事もなかったようにお守りを売りはじめました。



そう、こんなにもあっけない。


浦永は本殿に向かって合掌する前に、散歩がてら
境内をぐるっと回ってくることにしました。



しばらくして戻ってくると、ちょうどまた次の祈祷が始まるところでした。


ちょうどいい、私もお賽銭箱の横に立っておいて、お祈りしながら、自分も祈祷を受けた気になることにしよう。


そう考え、「ああ、左の奉納棚に大きなお酒がいっぱい奉納されていることよ」と思いながら何気なく前方を見たときです。






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浦永「え? あれ、私の納めたやつ??」


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アリーナ最前列ゥーーーーーーーーー!!!!!



すごい!神主さんよりも神様に近い!しかもご丁寧に
三宝に乗せてもらっとる
やないかい!!えーっ!良かった!

一回時間置いて戻ってきてこれ見れて良かった!
ちょっと神様、そのお酒私からのなんです!高いお酒じゃないしちょっとしかないけど、ご飯食べる時に飲む用にでもよかったらどうぞ!!!
去年すごくご利益頂いちゃったのでね!ささやかですがそのお礼です!!!お口に合いましたら幸いです!!!
と、神様に心の中でめっちゃ語りかけました。


そうして、祈祷が終わると。
神主さんは浦永が奉納したお酒を三宝ごと下ろし、
どこかに持っていきました。

どこ行ったんだろう、あのお酒…




終〜了〜!!!



「はじめての奉納」一丁上がり!!!


納めたお酒はどうなるのか、捨てられるのかもしれないし
神社側としては現金の方が嬉しいのかもしれませんが、
何かを奉納するのは非日常でちょっとテンションが上がるし、
神社によって対応はまちまちなので、面白いです。
神様的にはどうなんでしょうね。現金の方がいいのだろうか。
まあでも神様からしても、あんな小さなお酒、
それこそ非日常で、たまにはこういうのもいいか、って
面白く思ってくれるかもしれない。


というわけで、はじめての奉納は完了したのでした。


自分の気持ちの節目なんかにいいかもしれませんね。
私もまたいつかやってみたいと思っています。