浦永雑記

つれづれなるまま綴る雑記

浄土を訪ねる (1)"なんかいいとこ"

会社を辞めた。
と言っても、もう何年も前の話だ。
転職先は決まっていなかった。
ただとにかく、自分のためだけにしばらくゆっくりしよう、とだけは決めていた。


「ようやく休めるんやったらどっか行かへん?」
声をかけてきたのは、友人のAだ。
「私はちょうどGWあるしさ」
「いいね!どこ行く?」
胸を躍らせる私に、Aは予想もしない国名を告げた。
アイスランドはどうかな」


アイスランド


あなたはアイスランドという国をご存知だろうか。
世界地図の左上のほうにある、Wikipediaによると北海道と四国を合わせたくらいの面積の島である。

アイスランド・・・」
「なんかいいとこらしい」
かくして、無職の私はA(数十カ国を旅している旅のプロである)と、
北欧の「なんかいいとこ」を旅することになった。


今となっては長期休暇の度に海外を徘徊している私だが、それまでは代理店経由の旅しかしたことがなかった。
彼女と旅行のプランを組み立てていく過程で、
「飛行機のチケットはSkyscannerで探す」
「宿はtripadvisorで調べて一番安いサイトで予約すれば確実」
等のバックパッカーのイロハが私に叩き込まれていった。



日本からアイスランドへの直行便は(2020年4月現在でも)就航していない。

安いチケットを比較検討した上で、私たちは
東京
 ↓
トルコ/イスタンブール
 ↓
ノルウェーオスロ
 ↓
アイスランドレイキャビク
というルートの、ターキッシュ・エアラインのチケットを買った。確か往復11万円ほどだったと思う。


「行く前に、これ読んでみたらどうかな?」
Aが私に本を貸してくれた。
「『風とマシュマロの国』・・・著:ふかわりょう!?」
ふかわりょう、めっちゃアイスランド好きらしい」
言われるがまま読んでみたところ、アイスランドの空気が伝わってくるような気のする、いい本であった。

風とマシュマロの国

風とマシュマロの国


ふかわ氏は、一人でレンタカーを借り、何度もアイスランド各地を旅しているそうだ。
この「マシュマロ」というのは彼が羊を形容するのに使っている表現なのだが、つまりアイスランドには、たくさん羊がいるらしい。

(羊か・・・寒さで凍死したりしないのかな)
あまりに現地に対する知識がなく、出発前の私の頭の中にあったのはそんな疑問だけだった。